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『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その11 ユニット2 第16〜17章

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

 

 

1.ユニット2 第16章 情報理論システムとしてのゲーム(P391-410)

この章では、「情報理論」という学問分野を用いてゲームを考察します。言うならば、情報通信システムとしてのゲームです。

 

「情報理論では、情報の流れを定量的に研究する。つまり、送り手はどのように情報を送り、受け手はどのようにそれを受け取るか。」(P392)

 

「ゲームシステムでは、ほとんど常にプレイヤー間での通信や、システムの各要素のやりとりがある。こうした過程を理解するのに、情報理論は使える。」(P392)

 

いつも通り定義から入りましょう。情報理論における「情報」とはそもそも何なのか。

一般的には「意味」と同じような使われ方をする場合が多いのですが、情報理論においてはそれとは違った、かなり限定的な意味で使用されます。

 

一応定義を確認しておくと、

『「情報」とは、信号の数学的な内容を理解するための手段だ。』(P391)

こんな具合です。残念ながら、これだけではわけがわかりません。

定義よりも記述・解説を確認しながら使われる意味の範囲をつかみましょう。

 

^嫐は情報に関係ない

「情報は、メッセージの内容や意味にはまったく関係がない。ウィーバーが指摘しているように、二つの文字列があって、一方には筋の通った意味があり、他方には意味がないとしても、両者は同量の情報から成っている。」(P394)

 

ひとまず、意味や解釈からは切り離されたものであるということ。

 

⊂霾鵑鷲坡里さを測る

(情報は)「メッセージに含まれる知識を測らない。その代り、不確かさを測るのである。(中略)情報が完全に予測できるとき、情報はない」 (P394)

「情報とは信号の性質について、人がどの程度確信を持てるか、という度合いである。」(P394)

 

不確かさの度合いと深い関わりがあることがわかりますね。

推測とその答えという例から情報の量が比較されています。

 

答えが完全に予測できる場合、答えには情報はほとんど含まれておらず、反対に、答えのパターンが無限に広がっている場合、答えの情報量は大きなものになるといいます。

推測が極度に困難な場合の答えは、無限に広がっている不確かさを最小に減らすものであるからです。

情報量が多い情報=不確かさを大きく減らす情報、ととらえて良いでしょう。

 

「推測の自由がない(既に答えを知っているから)ということは、情報がないことなのだ。つまり、不確かさが減らないのである。」(P396)

 

 

次に考察されるのは「ノイズ」です。

 

「ノイズは、メッセージ中の情報量と不確かさの量を増やす」(P402)

 

ここで言う「ノイズ」は一般的な意味の理解でOKです。情報伝達を邪魔するものととらえます。

実用的なコミュニケーションにおいてはノイズは敬遠されるもの、極力排除されるべきものととらえられますが、ゲームにおいては必ずしもそうではない といいます。本章でもあげられていますが、伝言ゲームなどがその例です。小さな声で伝言をすることによってノイズが増していきますが、それを乗り越えるこ とを一つの遊びとしています。

 

 

次に紹介される概念が「冗長さ」。

 

『冗長さとは、情報システムにおいて、信号の一部が損なわれてしまっても、冗長な情報のパターンが、信号データの「穴」を埋めるので、メッセージがうまく伝達されるという事実を表す言葉だ。』(P405)

 

「冗長」というのは、一般的な意味ではだらだらと無駄が多いことを指すようです。(恥ずかしながら聞きなれない言葉でした。)

例えば英語の冗長さは50%程度であり、文章の半分くらいを取り去っても意味はおおむね通じるそうです。

冗長さは、情報に何らかの欠損が生じても意味が伝えられるという利点になっています。

 

ゲームにあてはめて考えると、例えばRPGでの村人との特に意味のない会話などがこれにあたるのでしょうか?

 

章全体をまとめると、ゲームは情報理論システムの一つではありますが、実用的なコミュニケーションツールではないため、ノイズを遊びを生み出す仕掛けとして利用したり、言語同様、ある程度の冗長さも必要であるということでしょう。

 

 

なかなか慣れない概念を扱ったため、きちんと理解ができているか怪しいところもあります。

次章を要約したあと大幅に修正を加えるかもしれません。

 

 

2.ユニット2 第17章 情報システムとしてのゲーム(P415-434)

前章では「情報」を情報理論に基づいて定義し、考察しましたが、本章では「情報」=「知識」(要するに一般的な意味)として扱われます。本章は直感的に理解しやすいため、後々使うであろう鍵概念を書き留める程度としておきましょう。

 

ゲームには完全情報ゲームと不完全情報ゲームがあるといいます。

 

完全情報ゲームは、すべてのプレイヤーがゲームのあらゆる要素をいつでも完全に知っているものを指します。例えばチェスや将棋など。

不完全情報ゲームはその逆で、例えば多くのカードゲームのように、相手の手札がお互い見えないようなゲームのことです。情報を隠すことで、プレイヤー間の心理的な読みあい・疑心暗鬼などが発生するようになっています。

 

「セリア・パースは、ゲームにおける情報を次の四種類に分類した。すべてのプレイヤーが知っている情報、一人のプレイヤーだけが知っている情報、ゲームだけが知っている情報、ランダムに生成された情報。」(P434)

 

一応、実例を考えてみましょう。カウンターストライクのようなマルチプレイ対戦FPSを例にします。

 

,垢戮討離廛譽ぅ筺爾知っている情報:各プレイヤーのキル/デス スコア、残り時間など

一人のプレイヤーだけ知っている情報:残弾や残りHP、視界に入っている物など

ゲームだけが知っている情報:BOTの行動パターンや性能など

ぅ薀鵐瀬爐棒言された情報:自動チームシャッフル(オートバランス)の結果など

 

「客観情報は、ゲームシステムの内部的な情報の構造だ。知覚された情報は、プレイヤーが遊びを通じて観察し、入手する情報である。」(P434)

 

まだ遊ばれていないゲームの場合、ゲームについての情報はすべて客観情報です。

プレイヤーに遊ばれ、発見されることによって、その一部分が知覚された情報となります。

: ゲーム研究 : 21:02 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その10「不確かさのシステムとしてのゲーム」

以前、ルールズ・オブ・プレイの要約はブロマガに投稿していましたが、今回からこちらに投稿します。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

 

ユニット2 第15章 不確かさのシステムとしてのゲーム(P351-387)

 

ここでは、「不確かさ」という側面から「意味ある遊び」が生じる条件について考察します。

ここでいう「不確かさ」とは、特殊な概念ではなく実に一般的な意味です。結果や展開が予測できないこと、という意味で使われています。

ゲームで不確かさが働く場合には、二つの水準、ミクロな水準とマクロな水準があるといいます。
マクロな水準とは、どんなゲームにも備わっている不確かさです。例えば、対戦ゲームで実力のわからない相手と戦うなどの場合。
ミクロな水準とは、個別のゲーム内システムに組み込まれた不確かさです。一文にまとめると少し難しい表現になってしまいますが、一例をあげるならば、勝つか負けるかわからない通常の戦闘イベントなどを思い浮かべていただければOKでしょう。

「不確かさは、あらゆるゲームにとって鍵となる要素だ。もしゲームが、前もって完全に確定していたら、プレイヤーがどんな行動をとろうとゲームの結果には、何の影響も及ぼさず、意味ある遊びは生じようがない。」(P386)

言ってしまえばごく当たり前のことではありますが、結果があらかじめ確定してしまうことは選択を迫ることのできるメディアとして致命的ですね。結果が予め確定すると選択が無意味になってしまいます。
加えて、ゲームルールの欠陥などなどからくるもの以外にも、三目並べのような、戦略の取り方が限られるゲームでも結果の確定が起きてしまうことがあるという例が紹介されています。(三目並べの場合、熟練者同士が戦うとほぼ引き分けに終わる)

不確かさには3つの段階があるといいます。

確かさ: あらかじめ結果が決まっていること
リスク: 一定の情報があらかじめ与えられている不確かさ(不確かである度合いがある程度、もしくは完全にわかること)
不確かさ: 結果が全く予測できないこと

ほとんどのゲームはこの3つの段階を組み合わせて作られていますが、くじ引きやルーレットなどは純粋なリスクのゲームです。

「ゲームシステムにランダムの仕組みがないとしても、ゲームに「ランダムな感じ」を出すことはできる。この感じは、事前に予測できない戦略や人づきあいの複雑さから生じることがある。」(P386)

偶然に基づく仕組みが入っていなくともプレイヤーにかなりランダムな印象を与えるゲームもあり、本章ではダイヤゲームがその例としてあげらています。
ダイヤゲームの場合、実際には(例えばサイコロを振るといったような)ランダムな要素はルールに組み込まれていませんが、ゲームの進行と同時に複雑な見た目になる盤面がプレイヤーにそう感じさせる、という例があげられています。
一方、同じボードゲームでもチェスや将棋などははるかにランダムな印象が少ないでしょう。どこにどういった能力のコマがあり、相手にとって、自分にとって何が脅威になるかがはっきりとわかるためでしょうね。

「ランダムな感じがほとんどないゲームは、ドライで競技のようになる。」(P386)

1対1の格ゲーに対して、FPSなどの複数対複数の対戦ゲーなどを思い浮かべてみるといいと思います。FPSもランダムな要素が含まれているわけではありませんが、参加人数の多さからゲーム展開に予想がつきにくく、多少なりともランダムな印象を与えます。

最後に、くじのような極めて純粋なリスクの遊びから意味ある遊びが生まれる理由を紹介しています。

「プレイヤーにしてみれば、偶然のシステムをどう舵取りするかを決める機会は、プレイヤーを純然たる運命に抗って進ませ、勝ち残りへの期待を持たせ、ゲームに意味を与える役に立つのである。」(P367)

「くじのような(中略)実際には戦略的な決定の要素がないようなシステムでも、意味ある遊びが生じる」(P367)

オンラインゲームのスクラッチ、ガチャなどを思い浮かべてみましょう。
例えばPSO2のスクラッチには3つの選択肢があります。欲しいアイテムが当たるか否かは、純粋な確率の問題であることはプレイヤーは百も承知です。
しかし、どれを選ぶか決めるにあたって結構な時間を費やすプレイヤーも多いことでしょう。
そして、その選択が当たった際には、まさに原因(自分の選択)と結果が結びついたような感覚を覚えるのである。
少し言い過ぎかもしれませんが、「当たった!」と同時に「当てた!」という感覚があるのではないでしょうか。
スクラッチやガチャは、ゲームというより集金システムであるとして叩きの的になっていますが、夢中になる人がたくさんいるのも事実です。
倫理的な面での良い・悪いは置いておくとして、夢中になる人がたくさんいるのはこういった理由があるのでしょう。

: ゲーム研究 : 13:21 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その9「創発システムとしてのゲーム」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲: ユニット2 第14章 創発システムとしてのゲーム(P303-P346)


本章では「創発」を引き起こすシステムという観点からゲームを分析します。

システムを扱う章なので、もう一度本書におけるシステムの定義を確認しておくと、「ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まり」(P95)です。

鍵となる言葉は「複雑さ」と「創発」。「複雑さ」から見ていきましょう。

「二 つの天体から成るシステム(一つの星とその衛星のようなもの)では、空間内でその二つの天体がどう運動するかを正確に予測できる形で、数学的に表現できる という実例である。だが、ひとたびこのシステムに第三の要素が加わると、それぞれの天体の重力が、他の二つの天体に作用して、その相対的な運動を決定する 数学的な要因が、とんでもなく込み入ってしまうのだ。」(P310)

ここでのポイントは、システムと呼ばれるものであれば何でも複雑なわけではないということです。なおかつ、複雑さ=ランダムだったり無秩序だったりすることではありません。

こういったシステムのあり方を、本書では「四種類のシステム」として整理しています。
単純な方から、固定、周期、複雑、混沌となります。

「固定」: 要素同士の関係が全く変化しないシステム
「周期」: 動的ではあるが、要素同士の関係は決まっていて、同じパターンを繰り返すシステム
「複雑」: 要素同士の関係は周期するシステムより込み入っているが、無秩序になるほど動的でもないシステム
「混沌」: 要素同士の関係がでたらめで無秩序なシステム

この中で、ゲームに使える、有益なのが「複雑」なシステムです。
「複雑」なシステムは「周期」と「混沌」の間の限られた領域に存在します。

では、ゲームにとって適切である「複雑」とはなんでしょうか。

ここでは『表か裏か』と『グリッド』という遊び(ゲームの要件を満たしていないので遊びとします)が例としてあげられています。

『表か裏か』のルールは実に単純で、一方がコインを投げ、一方がコインの表裏を当てるというだけです。プレイヤー間にその他のやり取りはないため、単純なシステムといえます。

『グリッド』はその名のとおり、格子状のゲーム盤を使い、ターンごとに自分のコマを動かしあうゲームですが、コマ同士は全く影響しあいません。構成要素同士が関係を持たないため無秩序なシステムであるといえます。

両者に共通するのは、どちらも「意味ある遊び」になっていないという点です。
しつこいようですが、念のため定義を振り返りましょう。

説明する定義:行為に対して結果がついてくる遊び
評価する定義:行為と結果がプレイヤーに認識でき、それらが後々のゲーム展開などに統合されていく遊び。

『表か裏か』も『グリッド』も説明する定義すら満たしていないことがすぐにわかります。
『表か裏か』は、結果が表であったにしろ裏であったにしろ予測という行為と因果関係がありません。予測しようがしまいが表か裏かどちらかが出ることは変わらないし、予測のしようもありません。『グリッド』に至ってはそもそも結果と呼べるものすらなさそうです。

ひとまず「複雑」でないものはわかりました。
ここで、いったいどうすれば「複雑」になるのか、本書では『表か裏か』のルールに手を加えることで意味ある遊びとなっていく例を紹介しています。

_駭辰鬚垢詈儿紅
コインを投げる前に、二人のプレイヤーは10分間会話をする。
会話の中で、投げる人は嘘をついても構わない。
⇒  会話というやり取りが間に入ることで、当てる側は投げる側がどう出るか推測することが可能になっています。なおかつ、投げる側も当てる側の推測を乱すよ う、嘘をついたりすることができます。会話の中でのやり取りが後のゲーム展開(表を出すか裏を出すか、表と予測するか裏と予測するか)に統合されるため、 「評価する定義」に合致するゲームになっています。会話というかなり動的なやり取りをしますが、ゲーム展開には一定の秩序があり、「複雑」になっているこ とがわかりますね。

⊃簑を繰り返す変更版
会話を禁止する代わり、ゲームを21回繰り返す。推測する人は当てるたびに1点を、投げる人は相手が外すたびに1点を得る。合計点の多いほうが勝ち。
⇒ プレイヤーはゲームを繰り返す内にお互いの癖を見抜こうするでしょう。当然、回数を重ねるほどお互いの癖がわかっていき、それが後のゲーム展開に統合されていきます。

リスクが増えてゆく変更版
推測側と投げる側を交互に入れ替える。推測側が当てたら1点。このとき、推測側は投げる側にもう一度投げてもらうか、役を入れ替わるかを選べる。連続で当てると点が倍になるが、そのターンに得た得点は0になり、役が入れ替わる。先に25点得たプレイヤーの勝ち。
⇒  オリジナルと同様に勝敗を左右する根本的な要素は確立ですが、リスクをとって早くためるかコツコツ確実にためるかをお互い選ぶことができるようになって います。点数の蓄積があり、なおかつ、相手がもうすぐ上がりそうならリスクをとって逆転を狙わざるを得なくなるなど、見事に行為と結果が後のゲーム展開に 統合されています。

手を加えることで、3つとも意味ある遊びの評価する定義に合致する「複雑」なシステムになりました。


次は「創発」です。定義から確認します。

「単純なルールから、複雑で予想ができないふるまいのパターンが生じることを、創発と呼ぶ」(P318)

先の3つのアレンジ版『表か裏か』は、ルールに変更を加えたとはいえ数行で記載できてしまうようなごく単純なルールです。しかしながら、どれも結果やゲーム展開が予想できない複雑さを持っています。

「創発システムのルールが作動するとき、構成要素の内部的な関係が、要素の属性を変化させ始める。この変化は、次に構成要素の内部的な関係の変化に影響を及ぼし、さらにはその属性を別のものに入れ替え、結果としてふるまいのループとパターンが生じる。」(P323)

ここで、以前まとめたシステムを構成する四つの要素をもう一度振り返りたいと思います。

・構成要素: システムを構成する部分、部品、パーツ
・属性: システム全体や、システムを構成する部分・パーツの特徴・属するカテゴリ。
・内的な関係: 部分・パーツ同士の関係。
・環境: システムを取り囲み、システムに対する解釈を方向づけるもの(システムに対する文脈)。

ここでは『ライフゲーム』というセルオートマトン(格子を使った自律的なシステム)を使ったシステムを例に創発の具体例を見ていきます。『ライフゲーム』は聞きなれないと思うので下記のサイトで実際に遊んでみてください。

第一学習社 「ライフゲーム」
http://www.daiichi-g.co.jp/osusume/forfun/07_lifegame/07.html

ルール
・白いマスの周囲に3つの黒いマスがあれば次の世代では黒いマスになる。
・黒いマスの周囲に2つか3つの黒いマスがあれば次の世代でも黒いマスになる。
・上記以外の場合には,次の世代で白いマスになる。
(上記サイトより抜粋)

格子にいくつか黒いマスを作り、システムをスタートさせると、黒いマスがルールに従ってどんどん動いていく様子がわかります(すぐに黒のマスがなくなってしまってよくわからない場合は、プリセットから何か選んでセットを押しスタートしてみてください)。

ルールは至って単純ですが、黒マスの最初の配置によってはそこからは想像もつかないような複雑な動きをします。まさに創発です。
創発をより理解するため、「組み合わせ」、「文脈依存」、「ボトムアップ」という3つの要素を見ていきましょう。
以下、本書より要約。

・「組み合わせ」
構成要素同士が孤立的な関係になく、組み合わさった関係次第で多様な結果が生じること。

・「文脈依存」
ここでの「文脈」は、「事柄の背景や状況」といった意味で使われているようです。
ラ イフゲームの場合、どのセルにとっても周囲の8つのセルの状況(白か黒か)がセルの生死(白になるか黒になるか)を決定しています(セルの周囲の状況=文 脈)。文脈は段階を踏むごとに変化していき、構成要素(=セル一つ一つ)の属性(白か黒か)を変化させ、それがまた新たな文脈を生み構成要素を変化さ せ・・・という具合に相互に関連しながら状態がどんどん変化していきます。
まとめると、構成要素の属性は構成要素の周囲の状況によって決定され、周囲の状況の変化はまた構成要素の属性を変化させていくということでしょう。

・「ボトムアップ」
ゲームはトップダウンではなくボトムアップだと述べられています。
なぜそう呼ばれるかは、プレイヤーがゲームの流れを作るのではなく、ゲームのシステムの個々の構成要素がプレイヤーの行動を促す形で進行するから、ということでしょう。


ここまでライフゲームをもとに創発の具体例を見てきました。ライフゲームは本書のゲームの定義からは外れるものの、創発そのものを理解する例としては十分です。

次に、ゲームにおいて創発がうまく起こるとどうなるか、という例が簡単にまとめられていますので確認します。

「ゲー ムで遊ぶということは、言い換えればそのゲームの可能性の空間を探ることだ。(中略)システムが創発する場合、ゲーム要素同士にどんな関係が生じるかとい う可能性を探ることに引き込まれっぱなしになる。(中略)創発するゲームシステムがうまくできていると、プレイヤーがシステムのふるまいの組み合わせを探 索するにつれて、新しい経験を提供し続ける。」(P333-334)

よく出来たオンラインゲームなどを思い浮かべるような一言ですね。あるいは格ゲーなどの対戦ものなど、繰り返し繰り返し試行錯誤を楽しめるゲームにはほぼ共通しそうな特徴です。

また、「エンジン」という造語が紹介されています。これはゲーム特有の創発の一例で、ある構成要素の属性(例えばあるキャラクターの性能的な特徴など)が作り手の予想と全く違った形で使われ、思わぬ性能を発揮したり、ゲーム展開を生み出したりすることです。
具体例としては、QUAKEのロケットジャンプなどがこれにあたるでしょうか。


本章をまとめると、ゲームは様々あるシステムの中でも「複雑」なシステムであり、中でも良いゲームは、「エンジン」をはじめ様々な「創発」を促すことでプレイヤーに充実した遊びの経験を提供しているということでしょう。


それでは、また次章。

: ゲーム研究 : 13:20 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その8 「ルールを定義する」「三つの水準のルール」「ディジタルゲームのルール」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲
 ユニット2 第11章 ルールを定義する(P239 - P250)
 ユニット2 第12章 三つの水準のルール(P255 - P278)
 ユニット2 第13章 ディジタルゲームのルール(P283 - 299)


1.ユニット2第1章 ルールを定義する
ここではゲームを分析する上で最も構造的・数学的な単位である「ルール」の定義を試みます。
「ルール」という言葉自体は、ここでは「規則」などの一般的な意味で理解して良いようです。
ただし、ゲームのルールは魔法円の中でのみ通用するという点で独特であり、日常生活におけるルール(例えば交通規則、法律、日常におけるマナー・・・など)とは大きく異なります。
こう考えると、前々章でなぜ「魔法円」という概念をわざわざ持ち出したのかが理解できます。
では始めていきましょう。

「ルールは遊びの経験とは別のものだ。ゲームのルールや形式的な構造を変えることなく、そのゲームで遊ぶ経験を変えることができる。」(P250)

こ れはFPSなどのシンプルなルールのジャンルを考える上で極めて重要に思えます。FPSは複雑なルールを組み込まれることが少なく、おおむねのルールはほ とんどの作品で共通しています。しかしながらグラフィックが変化すると経験されることはほとんど別物になっています。(例えばHALOオリジナル版とHD リマスター版、Wolfenstein 3DとDOOM・・・など)
ゲームを分析するために、なぜ「ルール」と「経験」と「文化」という3つの図式が必要になるかが理解できますね。

ゲームのルールの特徴は章末に綺麗にまとめられているため、それを確認して次の章に進みます。

・ルールはプレイヤーの行動を制限する。
・ルールは明確で曖昧さがない。
・ルールはすべてのプレイヤーに共有される。
・ルールは固定されている。
・ルールは拘束する。
・ルールは繰り返される。
(P250)

ほとんど読んだままで納得できると思います。
曖昧なルールではゲームではなくゆるい遊びになるし、参加している全てのプレイヤーの行動を制限・拘束できければ魔法円が成り立ちません。また、固定されずに刻々変化するルールというのも基本的にあり得ないでしょう。そのためルールは繰り返されることになります。



2.第12章 三つの水準のルール
前章まで、「ルール」という言葉は特に深く考えずに一般的な意味(規則など)で使ってきました。
しかし冷静に考えれば「ルール」はどこからどこまでを指し示すのでしょう。
前章の要約を書いていて、まさに「操作、もしくは操作性はルールに当てはまるのか??」としばらく考え込んでいましたが、そういった問いに答えてくれるのがまさにこの12章になります。

ゲームのルールには「操作のルール」・「構成のルール」・「暗黙のルール」の3つがあるといいます。


まずは操作のルールです。

「これは人が普通にルールだと考えているもの。つまりそのゲームで遊ぶために、プレイヤーに求められる指針である。」(P260)

すなわちゲームで遊ぶためのルールです。アナログゲームにおける説明書(遊び方、マニュアル)の内容はほとんどそのまま当てはまります。
デジタルゲームの説明書でも操作方法などを記述した項目についてはおおむね同じことが言えますが、アナログゲームと違って情報が隠される(隠し技など)ことが多いため、同様には扱えないでしょう。
デジタルゲームの場合は、プレイヤーが取ることのできるすべての行動・選択が操作のルールにあたるでしょうか。
少しややこしいのは、ボードゲームにおけるコマや盤の見た目や形、デジタルゲームにおけるグラフィックなどもここに含めて考えて良いかどうかという点ですが、これは13章の「ディジタルゲームのルール」に記載がありますのでここでは省略します。


次に構成のルールです。

「構成のルールとは、ゲームの抽象的で中核を担う数学的なルールである。(中略)ただし、プレイヤーがそうしたルールをどのように遂行するかということは、このルールには明示されていない。」(P277)

ややつかみにくいのがこの構成のルールです。
引用したように、プレイヤーが実際どういうものを用いてルールを遂行するかはここには含まれません。
本書では『すべり台とはしご』というアナログゲームを例に解説されていますが、なじみのないゲームであるため少々理解しにくかったです。
すべり台とはしごを解説するのも面倒なので、すごろくのようなごくシンプルなボードゲームを例に考えてみましょう。
構成のルールから見れば、すごろくはこんなところです。
(ややこしくしないために、最低限すごろくと呼べる程度のシンプルなものを想定したいと思います。)

・プレイヤーは全員スタート地点から開始する。
・プレイヤーは順番に回ってくるターンで1〜6の乱数を作り、出た数だけマス目を進む。
・マス目には、止まってもなにも起こらないマス、一度ターンを飛ばされるマス、マス目をスタート地点に向かって1マス戻るマスがある。
・ゴール地点に到達した順に順位が決まる。

本書にもありますが、構成のルールでは普通のすごろくで使われるコマやサイコロ、ゲーム盤など、プレイヤーが実際目にする・触れる・操作するものについて全く言及していないことがポイントです。
ゲームを構成する最も基本的な要素同士の関係だけを捉えたものが構成のルールといえます。


最後に暗黙のルールです。

これは端的に言って明記されないルールです。例えばボードゲームで、他のプレイヤーがコマを置くときに邪魔をしてはいけいない、自分のターンが回ってきたときに何十分も何時間も考え込んではいけない・・などです。


以 上の3つのルールですが、『別に「このルールは構成か操作か暗黙か」と最終的に決定に使えるということにあるわけではない。(中略)本書に登場するすべて の概念と同様、(中略)ゲームをデザインしてゆく中で持ち上がるデザイン問題を、同定したり分析したり解決するための枠組みとして提案しているのであ る。』(P268)とあるように、絶対的な定義ではないということが付け加えられています。
特に「操作のルール」という言葉が指し示す範囲は相当曖昧ですし、「操作のルール」と「構成のルール」の明確な線引きもなかなか難しいと著者自身が言っています。
しかしながら、こういった枠組みはゲーム評論を目指す上での分析の道具としては非常に有用でしょう。
余談ですが、こういった言葉の使い方はおそらく本書の特徴なのだと思います。
僕のようにゲーム評論を目指す人間にとっては曖昧な言葉の使われ方は敬遠したくなりますが、本書はあくまでゲームデザインの手法が主題であり、考える枠組みを構築することに重きを置いています。
本来ならばかっちりとした定義が欲しいところですが、ゲームという、日々新しいものが作られていく作品形式においてはこういった手法の方が有効とも言えそうです。


さて、ここで最も重要なのは以上の3つのルールの水準でした。
あとは、章の中のある程度重要な言葉についておさえていきたいと思います。


・「ゲームの同一性」
ゲームのルールを3つの水準から分析すると、構成のルールは同じであっても操作のルールがえば別のゲームとなりうることが理解できます。
例えばすごろくの例では、サイコロの代わりにルーレットのようなものを使うなどでしょうか。この程度では多少のアレンジにすぎませんが、さらにプレイヤー自身がコマの代わりとなって動き、ゲーム盤の代わりに地面にマス目を書くなどすればどうでしょう。
(実際そんなことをするかは別として)構成のルールを変えずとも、元のゲームとは違った遊びの経験が可能になることが理解できると思います。
では「同じゲーム」とは何なのか。
あるゲームを成り立たせているルールとはいったいどれなのか?
結論としては、経験・遊びといった観点からすると「構成のルール」と「操作のルール」の2つであると言えます。
「暗黙のルール」がここから外れるのは、その中身が多くのゲームで共通しており、特定のゲームの特徴としては語れないためです。
構成のルールと操作のルールの関係がゲームの形式的な同一性を形作ると言えます。

※ 「形式的な同一性」としているのは、あくまでルールという観点から見たゲームの同一性について語っているためです。ゲームの見た目・グラフィックが操作の ルールに完全に含まれるかどうかは難しいところですが、少なくとも、ルールという観点から見るならば、構成のルールと操作のルールが一致しているものは 「同じゲーム」としてとらえられる、ということでしょう。


・「ルールの特異性」
ここまでルールの3つの水準をそれぞれに見てきましたが、ゲームのルールが特異であることは、この3つの水準がそれぞれ独立して存在するわけではなく、互いに相互作用しながら最終的にプレイヤーに認識される形の「ルール」となっている点です。
この点で、一般的に使われる意味のルール(規則)とゲームにおけるルールは大きく違います。ゲームのルールは一般的意味よりはるかに複雑です。


・「エレガントなルール」
「一 般に、ゲームデザイナーは、プレイヤーにはルールを理解することよりも、遊びの経験に注目して欲しいと思っている。ルールをデザインする重要な側面の一つ は、経験を作り出すことであり、そこではエレガントなルールデザインによって、プレイヤーの注目をうまく惹き続けられる。」(P274)

これは引用の通りゲームのルールデザインのあり方についての言葉です。
プレイヤーの経験を適切に作り出せるルールデザインこそが良いゲームデザインである、ということですね。



3.第13章 ディジタルゲームのルール
ここでは、前章で曖昧なまま終わっていた「見た目・グラフィックは操作のルールに含まれるか」という疑問に一定の答えが示されます。

「あ るコードの要素について、それがルールに属するものかどうか決めかねる場合もある。例えば、3Dのゲームで、プールの水面を反射させるコードはゲームルー ルの一部ではない。これは単に見た目の表現という経験に関わる側面を扱ったコードだ。(中略)他方で、そのプールが特殊な魔法のプールであることをプレイ ヤーに知らせる視覚的なヒントとして水面が反射するのであれば、その反射の有無を決めるコードはゲームルールの一部である。」(P289)

具体例としてあげられているのが『ゲームボーイギャラリー』の「いま」モードと「むかし」モードです。むかしモードはゲームウォッチ時代の絵柄や音を再現し、いまモードはGB本体の性能を活かしたアレンジ版になっています。
両者は構成のルール・操作のルールが一致していますが、グラフィックや音だけが違います。グラフィックや音の変化がプレイヤーの操作に影響を与える要素が少ないため、この場合は、グラフィックや音といった要素はルールではないといえます。
次の例を見てみましょう。ステルスゲームの『シーフ』があげられています。

「こ のゲームでは、プレイヤーキャラクターから離れているコンピュータの敵キャラクターは陰に溶け込んでプレイヤーから姿を隠せるという〔グラフィック面に関 わる〕コードがあるが、これはルールの一部である。(中略)プレイヤーにどれだけの情報を知らせるかを決めるルールや、キャラクターが影に隠れる方法は、 ゲームルールの一部である。この場合、視覚表現に関するルールは、内部情報(プレイヤーからは隠された情報)と公開される情報(プレイヤーに知らされる情 報)を区別する役に立つ。この情報はプレイヤーの戦略にかかわり、直に影響を及ぼすものだ。だからこれはゲームの形式構造の一部なのである。」 (P292)

この場合はグラフィックと操作のルールが直接関係しているため、グラフィックがルールの一部となっています。ただし、影や敵キャラクターのグラフィックの品質がどうであるかはルールに直接関係ありません。
『シー フ』に限らず、ステルスゲームでは敵キャラがこちらを向いているかいないかは重要になりますが、敵がこちらを向いているかどうかは基本的にグラフィックで しか表現できないため、やはりグラフィックが操作のルールの一部となっています(ただし、敵キャラの顔や見た目といった要素はやはりルールと直接関係あり ません)。

『ゲームボーイギャラリー』と『シーフ』の例を比較してみると、どこまでがルールでどこからがルールでないかがある程度見えてきます。
ややこしくなってきたので一度まとめてみましょう。

・ルールとは規則である
・ゲームにおけるルール(規則)は3つの水準(構成・操作・暗黙)の相互作用で成り立つ
・ 見た目、グラフィックが操作のルールと密接に関わっている場合、グラフィックを操作のルールの一部分としてみなすことができる。ただし、グラフィック全て があてはまるのではなく、あくまで操作のルールと関連している要素(ルールを左右する要素)である。関連しない要素(グラフィックの品質など)はここには 含まれない。

この章の主要部分はこんなところでしょう。
それではまた次回。

: ゲーム研究 : 13:19 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その7 「主要図式」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲: ユニット1 第10章 主要図式(P207 - P217)


ここでは、今まで考察してきた鍵となる概念をどのように使っていくかを整理するため、考え方の枠組みとして「図式」という概念を使います。

「図式とは、知識を整理したり、組み立てる手段である。」(P216)
「物事を要約してみせるのが図式の主な特徴だ。」(P209)

図式という言葉自体はいたってシンプルで、この2点だけおさえておけば十分です。
その図式をどう捉えるのか、図式の4つの特徴が示されています。

・図式は変化するー図式は、枠組みを提供するものだが、環境からの新しい情報は、この図式に統合される。
・図式は組み込まれるー言い換えると、飛行機という概念を理解するための枠組みを構築する図式には、翼や旅程といった情報を表す図式も含まれている。
・図式はさまざまな水準の抽象性を表しているー例えば、図式は環境の中にある対象についての情報を表せる。
・図式は定義というよりは、知識を表しているー要するに図式とは「定義」というよりは、「百科全書」のようなものである。
(P210)

最後の1点だけ少し補足すべきでしょうか。
百科全書のようなもの、というのは「○○は大体こういうものだ」というように、正確で絶対的な定義というよりは、それに対する知識全般を示しているという意味です。

この「図式」を使って、ゲームを考える枠組みを整理していきます。


最初は「ルール ー 形式の図式」です。
端的にいうとルールに着目する図式です。
例として、PCでCPU相手に遊ばれる『囲碁』と、アナログゲームとして盤上で遊ばれる『囲碁』が比べられています。
形式の図式から見ると、両者はルールが完全に一致しているため、媒体が違っても同じ『囲碁』としてみなされます。
後述しますが、これを「経験の図式」や「文化の図式」から見れば両者は大きく異なる点がすぐに浮き彫りになります。
しかし、形式の図式では、ゲームを成り立たせている不可欠の構造であるルールに着目するため、両者を同じとみなすということです。

次に「遊び ー 経験の図式」です。
ゲームで遊ぶ人が実際に経験することに着目するのが経験の図式です。
さきほどの囲碁の例で考えれば、形式の図式から見ると両者は同じでした。
しかし、経験の図式から見れば、一方はCPU相手に遊ばれるものであり、一方は人相手に遊ばれるものであるため、プレイヤーに経験されることはまったく違います。
CPU相手であれば、CPUの癖・弱点を読むなどしながら一種パズルのように攻略していくでしょう。
一方、人相手であれば、相手の表情や雰囲気から戦略を判断するなどはるかに多様な駆け引き、やり取りが起こります。

最後が「文化 ー 文脈の図式」です。
文化という言葉は実にあいまいで捉えどころがありませんが、ここでは「価値と意味が共有されたシステム」という意味で使われています。
そのような意味で、ゲームが文化にどう影響を与え、また文化がゲームにどう影響を与えるのかに着目するのが文化ー文脈の図式です。
ここでの「文脈」とは、「デザイン」の章で見たようなゲームデザインにおける文脈ではなく、もっと一般的な広い意味での文脈でしょう。
単にゲームが遊ばれる環境として捉えてよさそうです。


これでユニット1は終わりです。
ざっとユニット1の内容をまとめてみましょう。
まずは鍵となる概念をもう一度振り返ります。



・意味ある遊び
説明する定義:行為に対して結果がついてくる遊び
評価する定義:行為と結果がプレイヤーに認識でき、それらが後々のゲーム展開などに統合されていく遊び。

・ゲームデザイン
ゲームデザイナーが文脈(記号などの意味解釈を方向付けるもの)を作る過程。
意味ある遊び(評価する定義)を生み出すことが目的。

・システム
「ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まり」(P95)
構成要素 ・ 属性 ・ 内的な関係 ・ 環境といった要素によって成り立ち、例えばゲームであれば、形式的なルールのシステム ・ 経験のシステム ・ 文化のシステムといったように捉え方を階層的に変えることができる。

・インタラクティヴィティ
ゲームの「システム」に独自の要素と言われるもので、ゲーム特有と言われるのは「選択」のインタラクティヴィティ。
「選 択」はミクロな水準(例えば、RPGの個々の戦闘におけるコマンド選択)とマクロな水準(どのくらいレベルを上げてボスに挑むか、など)に分けられ、一定 の過程を繰り返す形で進行する。それらの過程は、情報の処理(内部の出来事)とプレイヤーへの提示(外部の出来事)の二つに分類することができる。

・ゲームの定義
プレイヤーがルールで決められた人工的な対立に参加するシステムであり、定量化できる結果が生じる。

・デジタルゲームの特徴
アナログゲームやスポーツと違い、やりとりが即座かつ限られている。大半のシステムを自動化できるため複雑なルールを扱うことができ、プレイヤーにルールを隠すこともできる。ネットワークによる通信が可能であることも大きな特徴。

・魔法円
ゲームが実際に行われる、ルールによって支配された時間・空間。
また、それらと日常とを区別する境界線。



これらの鍵概念をまとめてみましょう。

ゲームとは、プレイヤーがルールで決められた人工的な対立に参加するシステムで、定量化できる結果が生じます。
ゲームと相対するものとしてゆるい遊びがあります。ゆるい遊びはルールが曖昧であったり、定量化できる結果が生じないことが特徴です。
しかしながら、ゲームとゆるい遊びの境界にあたる作品も存在し、シムシティやマインクラフト、各種のMMOなどがそれにあたると考えられます。
これらの作品は、プレイヤーが自ら目標を設定することでゲームになりますが、明確な結末がないため、目標を決めずなんとなく遊ぶこともできます。その場合は当然、ゲームではなくゆるい遊びになります。

そのゲームのシステムの一番の特徴としてあげられるがの「選択」のインタラクティヴィティです。相互作用という点では他のメディアにも特徴として見られますが、受け手に選択を迫れるのはゲームだけです。もっと言うと、何も選択されないゲームは進行すらしません。

ゲームが実際に遊ばれる空間は魔法円と呼ばれます。それは日常とは区別され、ルールによって支配された特別な空間です。

それらゲームをデザインすることの目的は、意味ある遊び(評価する定義:行為と結果がプレイヤーに認識され、それが後のゲーム展開に統合されていくこと)を生み出すことです。
つまり、行為に対して結果がついてくる(説明する定義)だけでもゲームとしては成り立つものの、それだけでは良いゲームデザインとは言えないということです。

こんなところでしょうか。
次回のユニット2からは、これらの鍵概念をさらに深く掘り下げていくことになります。

: ゲーム研究 : 13:19 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その6 「デジタルゲームの定義」「魔法円」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲
 ユニット1 第8章 デジタルゲームを定義する (P171 - 185)
 ユニット1 第9章 魔法円 (P189 - 202)



1.第8章 デジタルゲームを定義する

ここではデジタルゲームの定義が試みられています。
前章のゲームの定義では境界例がいくつか紹介されていましたが、今回も厳密な定義というよりはおおむねの特徴を列挙したものになっています。
以下がその特徴です。

特徴一 − 即座で限られたやりとり
特徴二 − 情報の取り扱い
特徴三 − 自動化された複雑なシステム
特徴四 − ネットワークによる通信
(P185)

特徴一の「即座で限られたやりとり」から見ていきましょう。
「即座」はそのままの意味で、リアルタイムのやりとりを可能にしていることです。
「限られた」は少し補足が必要でしょう。
例えばデジタルゲームとスポーツを比較してみます。
デジタルゲームではおおむね数個のボタンやレバー、あるいはマウスなどで操作が行われ、それに対するゲームからの応答も画面やスピーカーを通した限定的なものになります。
一方スポーツは体全体を使うものが主流です。相手とのやり取りという点でも、相手の微妙な表情や体の部位の動きなどを読み取りながらこちらが応答することが求められます。
「即座」という部分ではデジタルゲームとスポーツの共通点は多いですが、デジタルゲームはやりとりの仕方がはるかに限られています。

次は特徴二の「情報の取り扱い」です。
例えば、アナログゲームでは、少なくとも参加者の一人がルールをきちんと把握していることが遊ぶための必須条件といえます。
対してデジタルゲームは基本的にルール外のことはあらかじめできないようになっている(チートでも使わない限り)ので、かなり複雑なルールであってもプレイヤーは遊びながらルールを学ぶことができます。
も う一つ別の観点から見ると、アナログゲームは基本的にプレイヤーに情報を隠すことができません(処理と提示の一致)。対してデジタルゲームは、それぞれの プレイヤーが固有の視野を持ち、お互いの視野を見ることはできない(例えばFPSのマルチプレイ)など、情報を隠すことを得意としています。いうまでもな く、FPSの対戦では情報が隠されること(お互いの視野を覗き見ることができない)が大きな役割を果たしています。

次に、特徴三の「自動化された複雑なシステム」です。
ア ナログゲームでは、プレイヤーがルールに沿ってコマを動かしたりサイコロを振ったり、カードを切ったりすることでゲームが進行します。そのため、プレイ ヤーに把握できるルール、決まりごとの量には限界があり、あまりにも複雑・難解すぎるルールを設けることは難しくなります。
対してデジタルゲームはゲームの進行に関わる多くの要素が自動化されているため、アナログゲームと比べてはるかに複雑なルールを設けることができます。

最後に、特徴四の「ネットワークによる通信」です。
これはそのままの意味なので補足はあまり必要ないでしょうが、当然、デジタルゲームの中でもネットプレイを実装しているゲームは限られます。著者はあくまで、アナログゲームには基本的に不可能なデジタルゲームの要素として「ネットワークによる通信」をあげているようです。



2.第9章 魔法円
前章までで、本書が扱う「ゲーム」や「デジタルゲーム」が何であるかをつかむことができました。
本章は、それらゲームがどのように日常から切り離され、どのようにゲーム独自の時間や空間を作り出すかを明らかにするため、「魔法円」という少々聞きなれない言葉を用いて思考します。

「ゲームを始めたり、止めたりする際、プレイヤーは、時間と空間においてゲームを定義している境界もしくは枠をまたいでいる。(中略)私たちはこの境界を魔法円と呼ぶ。」(P192)
「ごく基本的な意味で、ゲームの魔法円とは、ゲームが行われる場のことである」(P193)

要するに魔法円とは、ゲームが実際に行われる、ルールによって支配された時間・空間であり、また、それらと日常とを区別する境界線です。
ゲームが行われる空間はそれぞれのゲーム独自のルールによって支配されており、プレイヤーがゲームを遊ぶということはそのルールを受け入れるということにほかなりません。
また、ルールだけでなく、ゲームを構成する諸々の要素は魔法円の中でのみ特別な意味を持ちます。
例えばトランプは魔法円の外ではただのカードの束ですし、ボードゲーム盤とコマなどはただの置物やフィギュアです。魔法円の中にあって初めてコマや盤は意味をもちます。

その魔法円の中においては、「楽しもうとする心構え」が必須であると述べられています。
「楽しもうとする心構え」とは、「プレイヤーたちがルールが課す制限を受け入れるということ」(P202)です。
これが欠けたプレイヤーが参加するととたんに魔法円が破壊されてしまいます。アナログゲームにおけるインチキ・イカサマ、デジタルゲームにおけるチートなど。

一方、ゲームと区別される「ゆるい遊び」では、ルールが不確定であるがゆえに最初から魔法円がはっきりしていません。逆に、ルールをきちんと定めていこうとすれば、それは「ゲーム」となり、もはや「ゆるい遊び」ではなくなります。



今回の要約範囲では、ゲームの中でも我々が最も知りたい「デジタルゲーム」のおおまなか定義と、ゲーム全般が遊ばれる空間=魔法円の存在を明確にしました。

次章はユニット1の最終章であり、転換点です。
これまで使った鍵となる概念を今後どのように使い、ゲームを分析していくか、おおむねの方針・枠組みのようなものが示されます。

: ゲーム研究 : 13:18 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その5 「ゲームを定義する」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲: ユニット1 第7章 ゲームを定義する(P139 - 169)


本題に入る前に、これまで触れてきた鍵概念についてもう一度おさらいしましょう。

・意味ある遊び
説明する定義:行為に対して結果がついてくる遊び
評価する定義:行為と結果がプレイヤーに認識でき、それらが後々のゲーム展開などに統合されていく遊び。

・ゲームデザイン
ゲームデザイナーが文脈(記号などの意味解釈を方向付けるもの)を作る過程。
意味ある遊び(評価する定義)を生み出すことが目的。

・システム
「ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まり」(P95)
構成要素 ・ 属性 ・ 内的な関係 ・ 環境といった要素によって成り立ち、例えばゲームであれば、形式的なルールのシステム ・ 経験のシステム ・ 文化のシステムといったように捉え方を階層的に変えることができる。

・インタラクティヴィティ
ゲームの「システム」に独自の要素と言われるもので、ゲーム特有と言われるのは「選択」のインタラクティヴィティ。
「選 択」はミクロな水準(例えば、RPGの個々の戦闘におけるコマンド選択)とマクロな水準(どのくらいレベルを上げてボスに挑むか、など)に分けられ、一定 の過程を繰り返す形で進行する。それらの過程は、情報の処理(内部の出来事)とプレイヤーへの提示(外部の出来事)の二つに分類することができる。



さて、本題のゲームの定義です。
ここでは様々なゲーム研究者の定義を引用・分析・比較しつつ、最終的に本書独自の定義が示されています。

「ゲー ムとは、プレイヤーがルールで決められた人工的な対立に参加するシステムであり、定量化できる結果が生じる。この定義の鍵となる要素は、ゲームがシステム であること、プレイヤーがシステムとやりとりすること、ゲームとは対立の例であり、その対立は人工的に作り出されたものであること、ルールは、プレイヤー の行動を制限し、ゲームを定義すること、どんなゲームにも定量化できる結果、もしくは目標があること。」(P169)

「人工的な対立」はプレイヤー対プレイヤーに限ったものではなく、プレイヤー対CPUなどの意味も含んでいます。
パズル、特にアナログゲームのクロスワードやソリティアなどのジャンルは一見境界例に思われますが、プレイヤーと問題(出題、あるいは出題者)との対立という意味で、「人工的な対立」の適用範囲として扱われています。
「人工的な」という表現は、「ゲーム」という言葉が政治や経済、あるいは実生活での駆け引きなどにも使われるため、実生活での駆け引き、比喩表現としての「ゲーム」と明確に区別する意味もあります。

「定量化」は単に「数値化」・「得点化」といった解釈で良いと思います。ゲームの結末には必ず勝敗があり、得点などの数値をつけられる。
これは「ゲーム」と「ゆるい遊び」を区別する意味があります。

ただ、それによって境界例も生じています。例えばマルチプレイのRPG(MMO)などです。

「RPG は、定量化できる結果を持つ場合と持たない場合のいずれであるとも考えられる。ゲームを全体としてみれば、唯一にして最優先の定量化できる目標はないかも しれない。だが、プレイヤーが回を追うごとに完遂する使命、プレイヤーが自分に課す個人的な目 標、プレイヤーが到達する力のレヴェルといったことを考慮するなら、RPGには定量化できる結果があるということにもなる。」(P166)

やや曖昧な書き方ですが、『シムシティ』なども同様に「プレイヤーが自分で目標を作る事でゲームになる」(P167、開発者の言葉の引用)だろう、とまとめられています。

MMOやシムシティの場合、プレイヤーのさじ加減で、ゲームにも無目的なゆるい遊びにもなり得るということですね。
マインクラフトなどの制作要素の強いゲームもそれにあたるでしょうか。
一方でGarry's modのような、完全な制作ツール(プレイヤー死亡など勝敗がない)はここでのゲームの定義からは外れそうです。


また、これまでも繰り返し使われ、ゲームと切っても切り離せない「遊び」について、ゲームとの関係が補足的に説明されています。

「一.ゲームは遊びの一部である。
遊びという範疇は、実に多様な遊びの行為を表している。こうしたさまざまな行為の一部がゲームであり、ゲームではない遊びもたくさんある。というわけで、ゲームは遊びに含まれている。
二.遊びはゲームの一部である。
ゲームは複雑な現象であり、これを考察したり、把握する方法はいくつかある。ルール、遊び、文化は、ゲームという現象の三つの側面だ。というわけで、遊びはゲームに含まれている。」(P169)

つまり、広い意味での「遊び」の中に、遊びの一形式として「ゲーム」があり、ゲームにはまた遊びが含まれているということでしょう。
ゲー ムに含まれている遊びが少々理解しにくいので例をあげると、例えば『FUEL』のようなオープンワールド作品には、レースに参加して賞金を得るなどの勝負 事(定量化できる結果があり、明確にゲームと認識できる場面)だけでなく、延々と車を走らせ景色を楽しむ、ジャンプ台を使って屋根に登る・・・などのゆる い遊びも含まれています。


ここでの重要事項をまとめてみます。
・実生活での比喩表現としてのゲーム(駆け引きなどの意)と、本書で扱う「ゲーム」は区別される。
・あらゆるゲームには人工的な対立と定量化できる結果(勝敗・得点など)がある。
・そのため、ゆるい遊びとゲームは区別されるが、MMOなどの境界例も存在する。

もちろん、ここでのゲームの定義はアナログゲームやスポーツ、デジタルゲームなどあらゆるゲームを含んだものです。

次章はいよいよデジタルゲームの定義になります。

: ゲーム研究 : 13:18 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その4 「インタラクティヴィティ」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲: ユニット1 第6章 (P108 - 137)


今回の章で扱うのは、ゲーム特有の要素と言われる「インタラクティヴィティ」(相互作用、双方向性・・などの意味)です。
本題に入る前に、いつも通りここまでの流れを振り返りましょう。
なお、今回はおまけ的な内容や用語解説なども多く含まれるため、本筋の「インタラクティヴィティ」から離れる部分は緑色で記述しています。

ユ ニット1 第3章では、ゲームデザインの目的は意味ある遊びを生み出すことであると述べられていました。第4章で は、その「デザイン」とは一体何なのかを明らかにしました。ゲームデザインにおけるデザインとは、文脈(解釈を方向づけ、実際に多くの意味を生み出すも の)を作る過程です。そして、ゲームデザイナーがデザインしているものは「システム」であると述べられています。

前回の第5章では、システムについての考察がなされました。システムとは、「ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まり」(P95)です。
それらは構成要素 ・ 属性 ・ 内的な関係 ・ 環境といった要素によって成り立ち、例えばゲームであれば、形式的なルールのシステム ・ 経験のシステム ・ 文化のシステムといったように捉え方を階層的に変えることができます。

今 回の第6章では、ゲームに独特の要素である「インタラクティヴィティ」について考察します。これはよく「相互作用」や「双方向性」などと言われるものです が、かなり広範な意味で使われる上に、「インタラクティヴ」・「インタラクション」・「インタラクト」など表記のゆれも相当に多い言葉です。
確かに相互作用はゲーム特有の要素だが、一体どの程度のレベルからゲーム特有のものと言えるのか、ということを考えていくのがこの章になります。


まず本文では、インタラクティヴィティとその周辺の言葉の定義から入ります。

・インタラクション[名詞] ― 一.あいだを媒介する行動。 二.双方的、または相互的な行動や作用
・インタラクト[動詞] ― 双方向の行動。相互的な行動。
・インタラクティヴ[形容詞] ― 相互的な行動の。互いに行動や作用する。機器と利用者とのあいだで情報の流れが双方向で、利用者の入力に対して応答する。
・インタラクティヴィティ[副詞] ― 最も広義には、単に二つの事物のあいだにある活動の関係
(P110-111から抜粋・加筆)

それぞれ品詞の違いはあれど、少なくとも本書では指している内容はほぼ同じと考えて良いようです。日本語で表現する場合、単に相互作用などと統一しても問題ないかもしれませんね。


以上に紹介されたのが辞書的な意味ですが、ゲームに限らない一般的な意味で、もう少し掘り下げが行われます。

「イ ンタラクティヴィティとは、表現そのものに、意味のあるやり方で介入できるということを意味している。といっても、表現されたものを別の仕方で読むと言う ことではない。例えば、音楽でインタラクティヴィティと言えば、音を変えられること、絵画なら色を変えたり印をつけること。映画なら(中略)公開の仕方を 変えることなどだ。」
(P112 アンディ・キャメロン『まやかし』より)

次に紹介されるのはクリス・クロフォードによるもので、二人の人物の会話を例に、インタラクティヴィティの繰り返しという特徴に注目しています。
人物AがBの言葉を聴いて考え、意味のある形に頭の中でまとめる。次に相手への応答を考え、言葉でそれを表現する。立場が入れ替わり、今度はBがAの言葉を聴いて考え・・・といった具合に、会話は繰り返す過程であると述べています。

これらの記述や定義によって、インタラクティヴィティとは、何らかのシステムの中で生じるもので、関係性があり、直接的に介入ができ、繰り返すものであるということがわかります。

以上が一般的な意味でのインタラクティヴィティの考察です。
ただ、これではゲーム固有の性質については説明できないため、もう少し厳密な定義付けが試みられます。


以下が、一般的なものを含めたインタラクティヴィティの意味です。

様式一 認知のインタラクティヴィティ、あるいは、解釈の関わり方。
 映画や本など、一方向と言われるメディアでも起こるものですね。書かれた文章などを頭の中で時系列にまとめ、情景を想像する・・・などの状態を想定すれば良いと思います。

様式二 機能のインタラクティヴィティ、あるいは、実用の関わり方。
システムの物質的な構成要素とのあいだの機能や構造に関するインタラクションが含まれる。 
 要は、使用者が画面などのインターフェースを通じてボタンを押す、それに対してシステムが応答するという一連の流れなどを想定してもらえれば良いです。

様式三 明確なインタラクティヴィティ、あるいは、デザインされた選択と手順の関わり方。
ここには、選択、ランダムに生じる出来事、動的に変化するシミュレーション、インタラクティヴな体験のためにプログラムされたその他の手順が含まれる。
 「選択」については後ほど詳しく考察されますが、要するにゲーム特有のインタラクティヴィティとはこのことです。

様式四 ものを超えたインタラクティヴィティ、あるいは、ものと文化の関わり方。
これは、デザインされた単独のシステムを経験すること(中略)の外側にあるインタラクションのことだ。最も分かりやすい例にファンカルチャーがある。
 日本で言うところの二次創作が例としてあげられています。 
(P114-115から抜粋、グレーの部分は加筆)

以 上が一般的な意味も含めた「インタラクティヴィティ」の使われ方です。特にゲーム独自の要素として様式三があげられていますが、「この四つの様式は、まっ たく別個の範疇のものではなく、インタラクティヴィティのあらゆる場面を理解する上で重なり合っている。デザインされたシステムを経験する場合には、いつ でもこの四つが同時に生じている」(P136)とあるように、全ての様式がゲームに当てはまることも強調しています。


次に、主として様式三に注目し、意味ある遊びを生み出すインタラクティヴィティを成り立たせている「選択」について考察がなされます。
「選択」そのものの意味はそれほど難しく考える必要はなく、プレイヤーがゲーム内で取ることのできるあらゆる行動、とでもおさえておけば良いでしょう。

「ゲー ムの働きの中にどのように選択が組み込まれているかを考えてみると、ミクロとマクロの二つの水準で、選択のデザインを見ることになる。ミクロな水準とは、 ゲームの中でプレイヤーが直面するそのつどそのつどの小さな選択のことだ。それに対してマクロの水準とは、このミクロな選択が鎖のようにつながって、より 大きな経験の軌跡を成す状態を指している。」(P118)

本文では囲碁の「戦略」と「戦術」の違いを例に、ミクロな水準とマクロな水準の選択を説明しています。

「『囲 碁』の戦術は、盤上のそれぞれの場所で展開する激しい戦いに関わるもので、個々の石や陣地に広がった小さな群同士が、互いに争ったり捕られたりと、衝突す るような場面がこれに当たる。対する戦略は、より対極の、最終的に勝者を決めるような盤全体の状況のことだ。」(P118)

ミクロな水準はわかりやすいのですが、マクロな水準がややつかみにくいため、少し具体例を考えておきましょう。
例えばRPGで言うならば、ミクロな選択は、戦闘画面でモンスターへの攻撃手段に何を用いるか(物理攻撃・魔法攻撃、はたまた道具での攻撃など・・)といったものです。
一方マクロな水準は、もっと大きな指針のようなものと考えることができます。例えば、どの程度敵を倒して経験値を得、どのくらいのレベルでボスに挑むのか、などでしょうか。

〜ここでのまとめ
「インタラクティヴィティ」(相互作用、双方向性)には四つの様式(意味・使われ方)があり、中でもゲーム特有の要素としてあげられるのは、「選択」の「インタラクティヴィティ」である。
「選択」にはミクロな水準
(その都度の小さな行動)とマクロな水準(より大きな指針のようなもの)がある。



更に深く「選択」の分析が進められ、その過程が明らかにされます。
以下がその過程をまとめたものです。()内、内部の出来事・外部の出来事については後述しますので一旦無視してください。


一.プレイヤーに選択が与えられる前に何が生じているか。(内部の出来事)
 ボードゲームであれば、盤上のコマがどういう状態(並び)になっているか、ACTやSTGなどであれば自キャラのライフや残機数はどのくらいあるか、敗北条件は何か、などがこれにあたります。

二.プレイヤーに対して選択肢はどのように提示されるか(外部の出来事)
 アナログゲームであれば、操作可能な駒や移動可能なマスが、デジタルゲームであればコントローラーやインターフェースがそのまま選択肢を提示している。

三.プレイヤーはどのように選択するか(内部の出来事)
 駒を動かしたりボタンを押したりといった行為がこれにあたる。

四.選択の結果はどうなるか。その選択の結果は、将来の選択にどう影響するか。(内部の出来事)
 ミクロな選択の結果としては、インベーダーでショットボタンを押して弾が発射され敵が撃ち落とされた、など。マクロなレベルでは、それらが積み重なってステージのクリアへとつながる。

五.選択の結果は、どのようにプレイヤーに伝えられるか。(外部の出来事)
 再度インベーダーを例にとると、ショットボタンを押すというミクロな選択の結果は、自機から放たれる弾としてプレイヤーに伝えられる(当然、命中すれば敵の消滅という形で敵の撃墜も伝えられる)。この段階が終わると最初の段階「一」へと戻っていき、過程が繰り返される。
(P124-125から抜粋、グレー部分は加筆)

「選 択には、このような五つの段階があり、(中略)それぞれの段階はいずれも、ゲームの内部か外部で生じる出来事である。内部での出来事は、選択のシステムと しての処理に関連している。外部での出来事は、選択をプレイヤーに向けて提示することに関連している。この二つの分類は、内部でのゲームの状態によって行 為が処理される場面と、その行為をプレイヤーに知らせることを区別する。ゲームは、内部での出来事を外部に向けて表現するというこの考え方は、ゲームとは 情報を記憶するシステムであるということを含意している。」(P126)

過程については以上で理解できると思いますが、内部の出来事と外部の出来事という区分は補足が必要ですね。

引用最後の「内部での出来事を外部に向けて表現するというこの考え方は、ゲームとは情報を記憶するシステムであるということを含意している。」(P126)という部分が肝でしょう。
内部と外部という言葉が使われているのでちょっとイメージがつかみにくいのですが、内部=ゲーム進行の処理、外部=ゲーム進行のプレイヤーへの提示と考えれば良いと思います。
ゲーム=情報を記憶するシステムと考えるため、情報を処理し、外部に向けて提示すると考えるのでしょう。
また、本文内で表記にゆれがありますが、内的な出来事=内部の出来事=内部での出来事、外的な出来事=外部の出来事=外部での出来事、ととらえて問題なさそうです。
本文では、それら内部の出来事、外部の出来事という切り口を使ってアナログゲームとデジタルゲームの違いについて論じています。

『ボー ドゲームの例では、ゲームの「内部」状態は、駒を盤上に配置するという仕方で、プレイヤーに対して直に示されている。ところがコンピュータゲームの場合、 ジュールが指摘しているように、内部の変数をプレイヤーに知らせようと思ったら、なにがしかの表現に変換する必要がある。』(P126)

本文ではチェスとアステロイドを例にとって説明しています。
アステロイドでは、プレイヤーに提供される選択肢は、画面に表示されたキャラクターや背景・残機数などとコントローラーのボタン等で表現され、プログラムの中身はプレイヤーに直接知らされません。
ゲームはプレイヤーに知らされない処理(例えば敵キャラのアルゴリズムなど)と、プレイヤーへの提示にはっきり分かれています。
一方チェスは、ゲームの状態はプレイヤーが操作可能な駒と盤によって直接示されています。
それら駒と盤がゲームの処理の機能も担っているため、
処理と提示が常に一致していると考えられます。
アナログゲームとデジタルゲームの違いは物質的な違いの他、こんなところにもあるわけですね。

〜ここでのまとめ
「選択」は一定の過程(上述した一 〜 五)を循環するようにして進む。それぞれの過程は、内部の出来事(処理)と外部の出来事(提示)に分けられる。
アナログゲームでは内部の出来事(処理)と外部の出来事(提示)が一致するが、デジタルゲームでは内部の出来事(処理)をプレイヤーが直接認識することはできず仮に直接見たとしてもただの数字の羅列)、プレイヤーが認識できるのは外部の出来事(提示)だけである。


本章では最後に、「可能性の空間」という独自の用語が語られます。本筋のインタラクティヴィティについての考察とは少し離れますが、以後重要な概念となるようなので確認しておきましょう。

「ゲー ムデザイナーの仕事は、あくまでも遊びが行われる構造と状況をデザインして、プレイヤーの行動を間接的に形作ることなのだ。こんなふうにゲームデザインに 含まれている、将来生じることになる行動の空間を可能性の空間と呼ぶ。つまり、これは、あるゲームで生じる可能性のある、あらゆる可能な行動の空間であ り、ゲームデザインから生じうる、あらゆる可能な意味の空間である。(中略)可能性の空間とはデザインされるものであり(中略)、そこから意味が生じるも のであり(中略)システムであり(中略)インタラクティヴである(中略)可能性の空間とはプレイヤーが、そのゲームを経験してゆく中で探索したり遊びま わったり、競争したり協力するための遊び場なのだ。」(P132)

ほとんど読んでそのまま理解できるかと思いますが、ゲーム内のキャラクターが取り得るありとあらゆる行動(動作や行動範囲)、プレイヤーがゲーム内の事物に対して解釈可能なあらゆる意味などを含んでいます。今回はひとまず用語としておさえるだけでOKのようです。


また、本文では選択の過程を使い、やってはいけないゲームデザイン例のようなものが提示されています。余談ではありますがあわせて紹介しておきましょう。
ゲーム作品の評価・評論には今の段階ではまだまだ到達できませんが、少なくともダメなゲームをはっきりさせることはできそうです。
ただ、あくまで暫定なので定義のはっきりしない話が続きます。一般的なゲームレビューの指針、その補助くらいにはかな、くらいの気持ちで読んで下さい。

  崛択に手応えを感じられない。例えば、手札から一枚出さなければならないような場合、どれを選んだところで大差がないとしか思えなければ、そのゲームはおそらく第四段階、つまりプレイヤーの選択がゲームシステムに与える影響について問題を抱えている。」(P127)
例 えばRPGで、性能が似たり寄ったりな装備がいくつかあり、「さほど違わないから見た目で選ぼう」という程度であれば問題はなさそうです。しかし、特定の 敵に勝っても負けても何事もなかったかのようにゲームが進行するような場合であれば大いに問題です。最も、それにストーリー上の意味(負けイベントなど) が与えられていれば話は別ですが。

 「次に何をしていいのか分からない。これは、コンピュータのアドヴェンチャーゲームに広く見られる問題だ。(中略)これは第二段階、つまり、プレイヤー に選択を提示する部分の問題だ。この手の問題はたいてい、表示する情報を増やしてあげることで解決できる。」(P129)
ADVに限らずRPGなどでもよく見られる問題ですね。FPSでも次にどこに行けばいいかわからないという状況はよくありますが、そうならない作品は確かに方向指示の表示など、プレイヤーをサポートする機能がしっかりしています。

 「わけも分からずゲームが終わった。ようやく山頂に辿りついたと思ったら、操作しているキャラクターが露出過多で思いもかけず死んでしまった。こんな がっかりするような体験が起きてしまうのは、プレイヤーにゲームの現在の状況が十分知らされていないからだ。この問題は第五段階、つまり、選択の結果生じ たゲームの新しい状態が、プレイヤーに対してしっかりと明確にされていないという問題だろう。」(P129)
クソゲーと言われる作品に多いパターンかもしれませんね。プレイヤーキャラの死因がわからないと攻略の指針も立てようがありません。

ぁ 峭堝阿侶覯未わからない。(中略)行動をしてもしなくても、プレイヤーに向けてはっきりと応答しないようなゲームなどだ。この場合、第三、第四段階、つまり、プレイヤーが行動して、結果の反応を得るという場面でおかしなことが生じている。」(P129)
,隼ていますが、これはもっと重症です。例えばコントローラーのボタンに対してプレイヤーキャラがどう反応しているのかが全くつかめないなど。

以上、ほぼおまけ的な内容でした。


さて、最後はいつも通り、本筋に戻ってここまでの流れをまとめておきましょう。


ユニット1 第3章では、ゲームデザインの目的は意味ある遊びを生み出すことであると述べられていました。第4章で は、その「デザイン」とは一体何なのかを明らかにしました。
ゲームデザインにおけるデザインとは、文脈(解釈を方向づけ、実際に多くの意味を生み出すもの)を作る過程です。
そして、ゲームデザイナーがデザインしているものは「システム」であると述べられています。
前回の第5章では、システムについての考察がなされました。システムとは、「ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まり」(P95)です。
それらは構成要素 ・ 属性 ・ 内的な関係 ・ 環境といった要素によって成り立ち、例えばゲームであれば、形式的なルールのシステム ・ 経験のシステム ・ 文化のシステムといったように捉え方を階層的に変えることができます。

本章では、ゲームの「システム」に独自の要素と言われる「インタラクティヴィティ」が考察されました。
一般的な意味も含めると「インタラクティヴィティ」には4つの意味がありますが、とりわけゲーム特有と言われるのは「選択」の「インタラクティヴィティ」でした。
「選択」はミクロな水準とマクロな水準に分けられ、一定の過程を繰り返す形で進行します。
それらの過程は、情報の処理(内部の出来事)と外部・プレイヤーへの提示(外部の出来事)の二つに分類することができます。

少しフライング気味になりますが、ゲームとは、受け手に選択を迫り、それに対して応答するメディアであると考えられるかもしれません。
触ったときに単に応答を返す、いわゆるインタラクティヴアートの類との違いはここにありそうです。(選択を迫るという部分が肝だと思う)

次章では、これまでに考察してきた概念を使い、いよいよゲームを定義する段階へと足を踏み入れます。

: ゲーム研究 : 13:17 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その3 「システム」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲: ユニット1 第5章 (P92 - P104)


要約記事その3。

ユニット1 第3章では、ゲームデザインの目的は意味ある遊びを生み出すことであると述べられていました。
第 4章では、その「デザイン」とは一体何なのかを明らかにしました。一応振り返っておくと、ゲームデザインにおけるデザインとは、文脈(解釈を方向づけるも の、実際に多くの意味を生み出すもの)を作る過程です。そして、ゲームデザイナーがデザインしているものは「システム」であると述べられています。
今回の第5章では、その「システム」とは一体何なのかを考えていきます。


「システム」には様々な定義がありますが、さまざまな定義を一通り紹介した上で、本書では以下の定義が使われます。

「システムとは、ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まりである。」(P95)

これだけでイメージしにくければ、以下の一文を読んでください。

「例 えば、サッカーのゲームでは、選手、ボール、ゴールネット、サッカー場などが、個別の要素としてある。試合が始まると、こうした要素はゲームという、より 大きなシステムの中で互いに特定の関係を持つことになる。例えば、各選手は二つのチームのうちのいずれかであるポジションに就く。選手の各種ポジション は、一つのチームを成すシステム(キーパー対フォワード対ハーフバック)と、チーム同士の関係を成すシステム(得点を狙う敵のフォワードからゴールを守る キーパー)の双方において相互関係するような役割を担っている。」(P94)

さて、そうしたあらゆるシステムには共通する四つの要素(構成要素・属性 ・内的な関係・環境)によって成り立っているといいます。順に見ていきましょう。


々柔要素
 「構成要素とは、システム内の部分、要素、変数である。」
 部分、部品、パーツなどと考えるとイメージしやすいかも。

属性
 「属性とは、システムやその対象の性質や特徴である」
 システム全体や、システムを構成する部分・パーツ、それぞれの特徴、カテゴリ。

F眦な関係
 「内的な関係とは、構成要素同士の関係である。」
 部分・パーツ同士の関係。

ご超
 「環境とは、そのシステムを取り囲む文脈である。」
 システムに対する解釈を方向づけるもの。

(P103-104から抜粋・加筆)


本文では机なども一種のシステムとして扱われたりしています。
余談かもしれませんが、「システム」というとあまりに抽象的な言葉なので、少しシステムとシステムでないものについて考えてみましょう。

【システムの例: 食卓机】
机は一般的に4本の脚と天板で成り立っています。その他、折りたたみが可能なものであれば蝶つがいのような仕組みがついていたり、それをロックする機能があったりといった具合。
ここでは、食事に使うごくシンプルな4本脚の机を考えてみます。
四つの要素によって考えてみると、

々柔要素 : 4本の脚と天板
属性 : 脚は天板を支えられる強度を持ち、天板は上にものを乗せられるよう平らになっている。
F眦な関係 : 四本の脚がそれぞれ、天板と乗せられる食器などの重みを支えている。
ご超 : 食事そのもの。食事をすることによって食卓机は食卓机となる。

こんなところでしょうか。
一方、机と対比する形でシステムでないものを考えてみると、ただの棒切れや板切れなどが一番イメージしやすいでしょう。いくら机の脚になりそうな形であっても、ただ棒があるだけ、天板のようなものがあるだけではシステムにはならないということですね。


以上、システムを形作る要素について考えてきました。
しかし、それに加えて、システムをどうとらえるかによって四要素として考えられるものも大きく変わってきます。
ゲームをシステムとして捉えるには、形式的なルールのシステム、経験に関わるシステム、文化のシステム・・といったように色々な捉え方があります。
それぞれの捉え方がどういうものであるか、捉え方によって四要素はどう変わるか整理していきましょう。
ここではチェスを例に考えます。


(1) 形式的なルールのシステムとしてのチェス
プレイヤーの経験や文化的側面などを考慮に入れず、厳密にルールのシステムとして捉えます。

々柔要素 (システムの部分・パーツ)
盤上のコマと盤

属性 (システムと構成要素の性質・特徴)
ルールがコマと盤(=構成要素)に与える特徴がこれにあたる。開始時のコマの初期配置や、それぞれのコマの動き方(動ける範囲、能力)などを思い浮かべるとわかりやすい。

F眦関係 (部分同士の関係)
盤上のコマと盤の関係、およびコマとコマの関係。コマが盤上に置かれている位置。例えば、あるコマが別のコマの動きを制限したり、牽制したりするなど。

ご超 (解釈を方向づけるもの)
コ マと盤がやりとりする環境はゲームの遊びそのもの。遊ぶことによって、ゲームの形式的な要素に文脈(解釈を方向づけるもの)が与えられる。つまり、遊ぶこ とでコマと盤(構成要素)や、コマの動ける範囲(属性)、コマ同士のルール上の関係(内的関係)などへの解釈が方向づけられる。遊ぶことによってシステム の要素同士の関係が把握できる。

(P96から抜粋・加筆)


(2) 経験に関わるシステムとしてのチェス
チェスを単なるルールのシステムとして考えるのではなく、プレイヤー同士やプレイヤーとゲームのやり取りのシステムとして捉えます。

々柔要素 (システムの部分・パーツ)
二人のプレイヤー。
※「経験のシステム」としてとらえるため、コマと盤はここに入らない。コマと盤は何も経験しない。

属性 (システムと構成要素の性質・特徴)
ゲームの目下の状況と、プレイヤーの操作するコマが各プレイヤーの属性。

F眦関係 (部分同士の関係)
二人のプレイヤーのやり取り。戦略上のやりとりだけでなく、プレイヤー同士の人づきあいや心理、感情の交流といった面も含まれる。

ご超 (解釈を方向づけるもの)
ゲームの盤とコマだけでなく、二人のプレイヤーから成るその場の環境も含まれる。これを遊びの文脈と呼ぶ。遊びを促す環境のあらゆる部分がこの文脈に含まれる。
例えばEメールを使ったチェスではメールソフトも遊びの文脈に含まれる。
また、プレイヤーのチェスに対する先入見も含まれる。例えばチェスはカッコいいとか、あるいはオタクっぽいなどといったイメージ。

(P97から抜粋・加筆)


(3) 文化のシステムとしてのチェス
最後はもっとも広い視点である文化です。

々柔要素 (システムの部分・パーツ)
チェスそのもの。最大限広い文化的な意味で考慮されたチェス。

属性 (システムと構成要素の性質・特徴)
デザインされたゲームの要素。どうやって、いつ、なぜこのゲームが作られ、使われたか。

F眦関係 (部分同士の関係)
ゲームと文化のつながり。例えば黒側と白側の関係、人種などとの関係。

ご超 (解釈を方向づけるもの)
この場合、環境はチェスの個々のゲームや遊びの文脈を超えて広がっている。あらゆる形態での文化そのものが環境にあたる。

(P98から抜粋・加筆)


ここでのまとめとしては、システムは階層的にとらえられるということです。経験のシステムは形式のシステムを含み、文化のシステムはその両方を含んでいることがわかります。
「ゲームの形式、経験、文化の面から見た性質は、いつでも総合的な現象としてあるということを忘れてはならない」(P100) とあるように、それぞれの捉え方に優劣はなく、かつ完全に切り離されるものでもないということをおさえておきましょう。


続くP101からは、さらにシステムについて深く考察し、「開いたシステム」と「閉じたシステム」というシステムの種類について考えます。
ここでの種類とは、さきほどの捉え方などとはまた違った切り口の話です。

「閉じたシステムは、その環境と交換しない。開いたシステムは、その環境から物質とエネルギーを受け取り、環境へと返す」(P101)

「システムを開いたもの、あるいは閉じたものにしているのは、システムと文脈、あるいはシステムを取り囲む環境との関係である。」(P102)

『システムと環境のあいだで受けわたされる「物質とエネルギー」は、単なるデータ(中略)から、人間のやりとり(中略)まで、無数の形態がある』 (P102)

「閉じたシステム」と「開いたシステム」が何であるかはおおむねこの3つの文で理解できると思います。
以下、チェスを例に閉じたシステムと開いたシステムを、形式、経験、文化という3つの捉え方を用いて確認していきましょう。


.船Д垢魴措阿離轡好謄爐箸靴涜える
自足したシステムであり、閉じている。

▲船Д垢魴亳海離轡好謄爐箸靴涜える
プレイヤーと戦略的な行動だけを考えるのであれば閉じたシステムである。しかし、プレイヤー同士の感情や人づきあいなどのゲームにはない要素を考慮に入れるならば開いたシステムである。おそらく「経験」をどの程度の範囲でとらえるのかによるのだろう。

チェスを文化のシステムとして捉える
社会、言語、歴史などとの関わりから、明らかに開いたシステムである。

(P102から抜粋・加筆)


ここでのまとめは、ゲームが開いたシステムであるか閉じたシステムであるかは、3つの捉え方によって異なってくるということです。


ここまでの流れを振り返ると、ユニット1 第3章では、ゲームデザインの目的は意味ある遊びを生み出すことであると述べられていました。
第 4章では、その「デザイン」とは一体何なのかを明らかにしました。一応振り返っておくと、ゲームデザインにおけるデザインとは、文脈(解釈を方向づけ、実 際に多くの意味を生み出すもの)を作る過程です。そして、ゲームデザイナーがデザインしているものは「システム」であると述べられています。
今回の第5章では、その「システム」とは一体何なのかを考えてきました。

システムについてもういちどまとめておくと、「ある環境の中で相互に作用し合いながら、個々の部分から生じるものとは異なった大きなパターンを作り出す、そうした事物の集まり」(P95)です。
それらは構成要素 ・ 属性 ・ 内的な関係 ・ 環境といった要素によって成り立ち、例えばゲームであれば、形式的なルールのシステム ・ 経験のシステム ・ 文化のシステムといったように捉え方を階層的に変えることができます。

余 談ですが、通常、ゲームファンが「システム」(ゲームシステム)と言う際には、形式的なルールのシステムにけるシステムを指している場合が多いように思い ます。具体的には、ストーリーやグラフィックなどを除いた部分、戦闘周りのルールであったり、ゲームの進行の仕方であったり。
しかし、経験のシステムとしてとらえた際にはストーリーやグラフィック、音楽などもシステムの一部分として捉えられるということでしょう。


最後に、続く第6章へのつなぎとなる1文を確認して、今回の要約を終わろうと思います。

「デ ザインとはシステムを作ることで実現される。とはいえ、他の分野のデザイナーもまた、同じようにシステムをデザインしている。(中略)ゲームデザイ ナーが作りシステムには、独特の性質がいくつもある。とりわけ最も突出した点の一つは、ゲームのインタラクティヴィティ、つまり、遊びという形で〔プレイ ヤーに〕直接の参加を求めることだ。」(P103)

続く第6章では、ゲームのシステム独特の要素である「インタラクティヴィティ」について、これまで理解した「デザイン」概念と「システム」概念を使って考察していきます。

: ゲーム研究 : 13:16 : comments(0) :
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』 要約その2 「デザイン」

以前ブロマガに投稿していたものの転載です。

 

 

『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光

今回の要約範囲: ユニット1 第4章 ( P65 - 88)


要約記事その2。
前回、第3章では、ゲームデザインの目的は意味ある遊びを生み出すことであると述べられました。
定義などは前回の記事を参照していただくとして、要は、ゲームを作るのはやりがいが感じられる遊びを生み出すためだ、ということですね。
続く第4章では、その「ゲームデザイン」の「デザイン」とは一体何なのかを理解します。


早速導入部分から確認してきいきましょう。

「概念や実践としてのデザインという考え方は、ゲームと意味ある遊びを探求することの中心に位置している。」(P67)

「とりわけゲームデザイナーは、意味という概念に関心を抱いている。なぜなら、ゲームデザイナーは、やりとりのシステムを作り出すことに携わっているからだ。そうしたシステムは、(中略)意味を生み出すさまざまな行為を生じさせる。」(P72-73)

さて、デザインには一般的な定義がいくつもありますが、ここでは以下の定義が使われます。

『デザインとは、「デザイナー」が「文脈」を生み出す過程、つまり、「参加者」が遭遇することになる文脈や、そこから「意味」が生じることになる文脈を作る過程である。』(P70)

用語を少し整理していきます。
「デザイナー」・・・ 単に制作者と捉えて良いでしょう。
「文脈」・・・ ゲームにおいては空間・物体・物語・行動といった形をとる、という記述がありますが、少しわかりにくいので後で解説します。
「参加者」・・・ 単にプレイヤーと捉えて良いでしょう。
「意味」・・・ もちろんゲームにおける意味なので、意味ある遊びにおける「意味」。ここでは「説明する定義」が使われています。要は、行為に対して何かしらの明確な結果があること、ととらえればOKでしょう。

しかしながら、これではまだ定義をしっかり理解できません。特に「文脈」についてはこれだけでは理解しにくいでしょう。

そこで紹介されるのが記号論です。
ゲームデザイナーは、相互作用(やりとり)によって意味を生じさせるシステムをデザインしているので、
意味や意味が作られる過程についての研究である記号論に触れておこう、といった具合に、記号論へ一旦寄り道していきます。


それでは記号論についての解説です。
以下引用。

チャールズ・パースは、記号論の四つの概念を明らかにした。
一.記号は記号自体とは別の何かを表している。
二.記号は解釈される。
三.記号が解釈されると意味が生じる。
四.文脈が解釈を生じさせる。
(P87-88)


ゝ号は記号自体とは別の何かを表している。
これはそのままの意味です。ごくごく一般的な理解でOK。


記号は解釈される
これもそのままの意味ですね。それ自体とは別の何かを表しているわけですから、記号は誰かによって解釈されるものである、ということです。


5号が解釈されて意味が生じる
これも読んでそのままの意味ですが、少し本文から補足する必要がありそうです。

「記号は、ある人に向けて何かを、ある観点や立場から表している。ある記号の意味は、システムの要素同士の関係から生じる。」(P88)

とあります。
後半の、ある記号の意味はシステムの要素同士の関係から生じるという部分が肝でしょうか。
ここでは、じゃんけん中に、あるプレイヤーがチョキ(V字)ではなくW字に三本指を出したらどうなるか、という例があげられています。
こ の場合、このままではW字は意味ある記号になりません。しかし、プレイヤー間の取り決めによってW字もチョキとみなすことになれば、以後、W字からチョキ (はさみ)という意味が生じることになります。W字=チョキ(はさみ)とみなすということは、当然、パー(紙)に勝ち、グー(石)に負けるという意味もつ いてきます。
「意味は要素同士の関係から生じる」の意味が少しつかめたでしょうか。


な弧が解釈を方向づける
「文脈」は少しややこしい言葉です。一般的な理解で言えば文章の流れのようなものでしょうが、ここでは厳密に意味をおさえておく必要があるでしょう。

ここで、「文脈」を理解するために「構造」についての解説が入ります。
この場合、構造とは言語でいう文法などです。「記号論で言う構造とは、記号もしくはシステムの要素がいかに結びつくかということを規定した規則や指針のことだ。」(P83)とあります。
ゲームでは、ルールが言語における文法にあたるといいます。

文脈と構造の違いは少しややこしいので本文の例にいきましょう。
(文体的に引用しにくいので最初から要約します。)

<構造の例>
「ほとんどのsmooglesにはcomcomがある。」
smoogles もcomcomも一体何なのか全くわかりません。が、これを英文法(=構造)から見ると、smooglesは複数形になっているため二つ以上の smoogleがここで扱われていることや、comcomは名詞で、なにかの性質もしくは物事であることがわかる、といった具合です。結局 smooglesやcomcomが何なのかはわかりませんが、推測するヒントくらいにはなりそうですね。
一方、文脈を見ていきましょう。

<文脈の例>
「私のgyxpyxは壊れた。」
この文章単体では一体何が壊れたのか全くわかりません。
gyxpyxなんて聞いたこともありませんが、ただ、構造(文法)から解釈すればgyxpyxが名詞であろうことはわかります。
これに・・・

「キーの一つがはまりこんでしまった。」
この一文が加わることで、何かキーのついたものだということがわかります。
タイプライターとかキーボードとか、そんなものでしょうか。「一つ」と言っているので複数のキーがあることもわかりますね。
さらに・・

「それと、新しいリボンがあればなんとかなるのだが。」
こうなると、もはやタイプライターか、タイプライターによく似たものだろうということがわかります。
少なくとも、大声で異をとなえる人はいないでしょう。おおむね、どの人の頭の中にもタイプライターのようなものが浮かんでいるはずです。

こうして構造と文脈を比べてみると、結局のところ意味の多くは文脈から発生していることがわかります。構造からはヒントのようなものはたくさん得られますが、それ単体では意味を決定するまでには至らないということですね。

少し込み入った話になってしまいましたが、「文脈」がいかにして解釈を方向づけていくのかが感覚的に理解できたかと思います。「構造」との違いについてもこれでOKでしょう。


さて、少々寄り道が長くなりました。
もう一度、ゲームデザインにおける「デザイン」の定義を思い出してみます。

『デザインとは、「デザイナー」が「文脈」を生み出す過程、つまり、「参加者」が遭遇することになる文脈や、そこから「意味」が生じることになる文脈を作る過程である。』(P70)

どうでしょうか。
「文脈」の意味が詳しくわかったことで少しとらえかたがはっきりしたでしょうか。
「ゲームの文脈は、空間、物体、物語、行動といった形をとる。」(P71)とありました。

例えば、真っ暗な「空間」に岩のような「物体」がポツポツと浮かんでいたり、飛行機のような「物体」が何種類か入り乱れて飛んでいたとします。この時点でおそらく宇宙空間か何かであることがわかるでしょう。
更 に、何らかの形(オープニングや説明書のストーリー欄)で、「人類と宇宙人の間では長らく戦争が続いており・・・」などという「物語」が加われば、先ほど の何種類かいる飛行機のような「物体」は宇宙船か宇宙空間用の戦闘機で、おそらく人類側のものと宇宙人側のものに分れて戦闘しているのだろうということも 把握できます。
こういったものがゲームにおける文脈と考えられます。

ゲームデザインにおけるデザインとは、このような文脈を作る過程であり、文脈から様々な意味が生まれる、ということですね。
これがデザインについての結論になります。

では最後に、次章の橋渡しとなる一文を見て今回の要約を終わりたいと思います。


「ゲームデザイナーがプレイヤーに提供する意味ある遊びは、デザインされたゲームのシステムか ら生じるのであり、。また、ゲームと、より広い社会や文化のシステムとのやりとりの中から生じるのである。ゲームデザイナーは(中略)システムをデザイン しているのである。」(P87)

ユニット1 第3章では、ゲームデザインの目的は意味ある遊びを生み出すことであると述べられていました。
第4章では、その「デザイン」とは一体何なのかを明らかにし、ゲームデザイナーがデザインしているものは「システム」であると述べられています。

続く第5章は、じゃあその「システム」とは一体なんだろうか、ということでシステムについての考察が述べられます。

: ゲーム研究 : 13:15 : comments(0) :
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