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【レビュー】亡国のクルティザンヌ - 時代に翻弄された少年の復讐劇

『亡国のクルティザンヌ』

 

開発元: Cosmillica

発売年: 2016

価格(レビュー時点): ¥1404 (DLsite)

開発元公式HP

販売ページ

対応ハード: Win

ジャンル: ビジュアルノベル(選択肢なし・フルボイス)

世界観・ストーリー: ミステリー・サスペンス・時代物・歴史もの・政治もの・背徳・退廃

18禁要素あり

 

 

レビュー時点のプレイ状況:1周プレイ

クリアまでのプレイ時間:78時間程度

 

ページ内ネタバレ要素: ページ最下部にあり(注意書きと長めの改行を入れてあります

 

 

1.概要(ゲームルール・システム・世界観・雰囲気・音楽など)

選択肢なしのビジュアルノベルであるため、正確にはゲームの定義からは外れます。

 

19世紀のパリを舞台にした、いわゆる時代物のミステリー/サスペンスです。

フランスの政変を基軸に物語が展開していくため、登場人物はそれぞれに政治的な思惑を持っており、複雑な利害関係にあります。

政治もの特有の陰湿さ、互いを出し抜こうとする心理戦・腹の探り合い、復讐に燃えるニナ(高級娼婦の女装少年)の心情、生い立ち・・・。実に重厚で隙がなく、人間の暗部を深く鋭く描いています。

 

作中で登場する政治に関わる出来事は、ほとんどが事実とされていることなのでしょう。

人物同士の会話場面だけでなく、政治体制の大きな移り変わりなどは、白黒写真や絵画とフランス語音声+日本語字幕による解説場面で説明されます。なにかのドキュメンタリーのような雰囲気です。

こういった配慮のおかげで、自分のような学のない人間でもなんとか物語についていくことができました。

 

絵こそ普通のアニメ絵ですが、内容はというと一般的なビジュアルノベル(数多くある、ラノベに寄せたような作品群)とは明らかに一線を画すものであるといえます。

 

 

2.良い点・見どころ

プレイヤーへの物語情報の伝達の仕方、情報量の制御が非常に見事です。

前半は、主人公の心の内・思惑などをプレイヤーに積極的に語り、これから起こるかもしれない出来事をある程度予測させながら緊迫感を生み出しています。そのためか、ニナの視点を通して語られる割合が多いように思います。

 

謳い文句の通り、本格的に群像劇となるのは後半からでしょうか。複数の登場人物を通して物語情報が得られる割合が多くなります。

それにも関わらず、重要人物の心の内は語られずに情報が制限され、急激に展開の予測ができなくなっていくことに不安を強く煽られます。

頭の中で、人物同士の関係、政治の動き、物語上の過去の出来事などを整理しながら必死に予測を立てようとするのですが、どうにも核心部分が見えてこず、つかみどころのない不安感がどんどん増大していく感覚がありました。

 

思考を繰り返しながら、もしや・・・と、ある人物の思惑がはっきりと理解できたときは、人間の持つ恐ろしさやおぞましさに全身が震え、涙が流れてくるほどの恐怖を覚えました。

因果関係も隅々まで抜かりなく構築されており、本当に隙のない作品です。

 

 

3.難点

一部ボイスが出ない箇所や顔グラが明らかに間違っている場所がありましたが、まあプレイには支障ない程度でしょう。

 

 

4.おすすめしたい人

・『ファタモルガーナの館』などの重厚なミステリー/サスペンス作品が好きな方

・歴史や政治を扱った作品が好きな方

・人間の暗部を深く描いた作品が好きな方

・余韻を強く残すダークな作品が好きな方

 

 

5.総評

分類上はエロゲーであることと、女装少年という少々好みが分かれそうなキャラクターが登場することなどから敬遠される方もいらっしゃるでしょうが、そういった部分にとらわれずぜひとも手に取っていただきたい作品です。

 

 

以下、長めの改行を挟んでネタバレ込みの感想になります。白文字にしてありますので、読む方は反転させてください。

プレイ前に読んでしまうと本作の魅力を大きく削いでしまうため、未プレイの方は絶対に見ないで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6.ネタバレ込み感想

ずっと主人公だろうと思っていたニナが中盤で倒れたことも少々驚いたのですが、それよりも大人になったコレットが怖すぎて怖すぎて・・。

 

ニナの行動目的については直接語られる部分が多くかったのですが、対して大人になったコレットは行動目的がどうにもつかめないようプロットが工夫されています。

おそらくニナのかたき討ちをするのだろうな、ということは前半を見ていれば誰でも理解できますが、ナポレオンの愛妾となっても一向に手を下さず、「はて、もしや狙いは皇后か?」と思ってもそれもどうにも違う。

最初は殺し方にこだわってるのかな、くらいに思いながら読み進めていたのですけども、どうにもおかしい、何かおかしい・・という捉えどころのない不安感がどんどん強くなっていったのを思い出します。

 

少しずつ歯車が狂うように世論が戦争に向けて動き出し、本来国を取り仕切るはずの政治家や皇帝でさえもその動きを止めることができない様は、ポール・グリモーのアニメーション映画『王と鳥』を思い浮かべるものでありました。

 

そしてコレットの出生や目的をすべて理解できたときの言いようのない恐怖。恐怖。恐怖。

まさか、と予測が立った時点でもう震えと冷や汗が止まらなかったのですが、それが直接明かされたときには涙が溢れました。

あまりにも忌まわしくあまりにも悲しく、そしてどこまでも恐ろしい。

そしてコレットの目論見は見事達成され、たった一人の少年と、その意志を受け継いだ一人の少女に、ナポレオンも皇后も完全に屈し、フランスは破滅を迎える・・。

復讐を遂げたコレットすらも暴動の中で倒れ、全ては無に帰す。

 

どこまでも救われない話ですが、精密に構築された因果関係は結末を感情で否定することを一切許してくれません。

 

 

さて、ほとんど語りたいところは語りましたが、物語の中核部分以外のところにも少し触れていこうと思います。

 

個人的に気に入ったキャラクターはモルニー公ですね。

自らの罪、ニナから向けられた憎悪という憎悪を理解し、破滅を受け入れてなお、純粋なまでにニナを愛しているという彼の姿には心を打たれるものがありました。

 

濡れ場に関しては、ニナが警官に犯されるシーンが印象的でしたね。

非常に忌まわしくおぞましいシーン・・・のはずなのですが、本当に不思議なくらいニナの妖艶さが引き立つシーンだったなと。

その後のシーンも印象的で、あんな殺され方にも関わらず死に顔はとても穏やかに描かれています。

 

後になって考えると、ニナもまた、警官たちからの仕打ちを自らの罪(たくさんの男女を弄び破滅させてきたこと)への報いとして受け入れていたのかな、と思わなくもありません。

あるいは、モルニー公が言うところの「神が与えた最後の槍」に彼自らが飲み込まれてしまったのか。それも含めて自らの破滅を受け入れたのか。

 

選択肢のないビジュアルノベルは滅多に再プレイすることはないのですが、本作は珍しく例外になりそうです。

また一つ、忘れられない作品に出合うことができました。

: ゲームレビュー : 08:05 : comments(0) :
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