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『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(下)』 要約その4 シミュレーションの遊びとしてのゲーム
『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(下)』
著者: ケイティ・サレン、エリック・ジマーマン
訳: 山本貴光
今回の要約範囲: ユニット3 第27章 シミュレーションの遊びとしてのゲーム(P274-363)


本章では、ゲームのシミュレーションとしての側面、およびシミュレーションと現実との関係を考察します。
​最初の話題は「シミュレーション」とはそもそも何か、です。
『シミュレーションとは、「現実」の側面を進行過程として表現したものである。』(P280)

「いかなるゲームもシミュレーションとして考察できるということを主張してゆこう」(P283)
 
本書では『テトリス』も一種の物理現象のシミュレーションと見なしています(ブリックが重力にひかれて落下するため)。
一部にでも現実にある何かを表現したものがあればシミュレーションとして見なすという立場を取るため、あらゆるゲームはシミュレーションであると結論付けているのでしょう。

「進行過程」という言葉は整理が必要ですね。
『「進行過程」という語は、ゲームが示しうる、あらゆる種類の過程に基づいた手法を略記したものだ。』(P290)
​「進行過程の表現とは、過程に基づいた、動きのある描写だ。進行過程の表現とは、シミュレーションがいかにしてその対象となる物事をシミュレートするかということである。」(P362)
 
何かに向かっていく道筋に基づいた、動きを伴う描写・表現、といったところでしょうか。
​もう少し「進行過程」とゲームの関係を詳しく見ていきましょう。

​「ゲーム全体を、特定の対象について進行過程で表現したものとみなすことができる。さらに、ゲームにはより小さな進行過程の表現が含まれており、そこからより大きな描写がつくられるのである。」(P362)

具体例を考えてみます。個人的に考えやすいので『東京バス案内』にします。(多分『電車でGO』とかでもOK)

特定の対象: バスの運転
​特定の対象を進行過程で表現: 出発地点から、途中駅を経由して目標地点まで、リアルタイムでバスを運転する表現
​小さな進行過程の表現: ハンドル操作、アクセル&ブレーキ操作、ウインカー操作など個々の(動作を伴った)表現

ざっくりいくとこんなところでしょうか。
​ここまでが「シミュレーション」自体の考察。


​では、そのようなシミュレーションという観点からゲームを見るとどうでしょうか。
ゲームではないシミュレーションも世の中にはたくさんあり、そういったものをゲームを分ける要因は何でしょうか。
いまいちど、本書におけるゲームの定義を振り返ります。

「ゲームとは、プレイヤーがルールで決められた人工的な対立に参加するシステムであり、定量化できる結果が生じる。この定義の鍵となる要素は、ゲームがシステムであること、プレイヤーがシステムとやりとりすること、ゲームとは対立の例であり、その対立は人工的に作り出されたものであること、ルールは、プレイヤー の行動を制限し、ゲームを定義すること、どんなゲームにも定量化できる結果、もしくは目標があること。」(『ルールズ・オブ・プレイ(上)』P169)

​鍵となるとなるのは本書のゲームの定義にも含まれている「対立」、つまり、プレイヤーを人工的な対立に参加させることでしょう。
​「対立」が含まれないシミュレーションは数多くあり、そのどれもが一般的にはゲームと認識されないものです。

​しかしこれでもまだ十分ではなく、例えば自動車教習所にあるようなドライブシミュレーターはどうなのか、といった疑問が生じます。
​これはかなりあいまいな例ですが、おそらくは遊ばれ方(使われ方)次第なのだと思います。
運転技術の習得という、現実・日常生活に直接関係のあるものとして取り組まれればそれは訓練です。
しかし、(かなり特殊な状況ですが)すでに運転を習得したドライバーがドライブシミュレーターを使えば、それは単なる遊びとして捉えることもできるでしょう。


「ゲームは動的な過程によって対立を表現するものだという洞察は、ゲームで特定の内容ばかりが流行している理由を説明するのに役立つ。」(P300)

ゲームには「対立」が必須になるため、シミュレートしやすいものとしにくいものがあるということです。​戦争や何らかの戦闘を扱ったゲームが無数に存在する(むしろそういったものばかりある)のは、それらがそもそも対立という要素を直に含んでいるためシミュレートしやすいという理由があります。


​「シミュレーションとは、抽象的、数値的、限定的、システム的なものだ。一つのシミュレーションが広くかつ深いということはあり得ない。」(P362)

「どうしてゲームは、幅広くかつ深く、両者を満たすようにシミュレートできないのだろうか。(中略)時間と予算の限度だけではない。(中略)意味ある遊びは、プレイヤーが、限られた知りうる選択肢から、意味ある選択を下せるからこそ生じてくるものだ。それだけに、プレイヤーがシミュレートされているあらゆることを認識するのに支障があれば、知りうる選択肢についても理解の程度が低くなってしまうだろう。」(P323-324)

あらゆる面で現実(日常)を完璧にシミュレートできない理由には、作り手の限界だけでなくプレイヤーがついていけるかどうかという遊ぶ側の限界もあるということです。
​自由度の高いオープンワールド系のゲームであっても、実際にできることは(現実と比べて)相当に限られ、数値化や抽象化によって表現されています。


次に触れられるのが、ゲームとリアリティについて考える際の誤った捉え方です。

(没入の誤解とは)「ある表現媒体の経験から得られる楽しさは、その参加者を、架空の、シミュレートされた現実へと感覚の上で移動させてしまう能力にかかっている、という発想のことだ。」(347)

​「プレイヤーは、ゲームに夢中になる。それはその通りだ。だが、遊びそのものを通じてのめり込むのである。先に見たように、遊びはメタコミュニケーション、二重の意識の過程であり、プレイヤーは遊びの状況が人為的なものであることを十分自覚しているのである。」(P350)

​究極にリアルなゲームとは現実と区別がつかないことだ、という意見を目にするのは特に珍しいことではないでしょう。
​しかし、これまで見てきたように、プレイヤーは自分が魔法円の中にいることを明確に意識しています。
​没入とは架空の作品と現実(日常)の区別・垣根がなくなるということではなく、対象を架空の作品と認識しながらのめり込むことである、ということでしょう。
​この主張を補強するため、メディア論から理論が引用されています。

「メディア評論家のボルタ―とグルシンは、どんなメディアも再媒介化によって機能していると論じている。再媒介化には相反する二つの要素として、無媒介性、つまり、正しく忠実な表現を前提とするものと、超媒介性、つまり、媒介表現が具えている構成されたものという性質を強調するものとがある。」(P363)

◇無媒介性と超媒介性
​無媒介性:メディアがとても本物らしく、現実(日常)と区別がつかないように思えること
​超媒介性:メディアが人工物であることを思い出させること
再媒介化:メディアがとても本物らしく感じるが、それと同時に人工物であることを思い出させること

こんな形でまとめることができます。
​本章であげられている例はウェブカメラで、高品質なウェブカメラで映した通話相手の顔は実に本物らしく見えるが、PC、カメラ、画面などを通して通話していることを認識している(させられる)ため、人工物であることも常に思い起こさせるという具合。
そしてこの特徴はあらゆるメディアにあてはまる、と。


​最後に触れられるのがゲームにおける「キャラクター」とプレイヤーの関係です。

「プレイヤーは遊びに伴う二重の意識によってゲームキャラクターと関わっているのだ。(中略)プレイヤーはキャラクターが人為的にこしらえられたものだということを十分自覚しているのである。」(P355)

「心理学者のゲイリー・アレン・ファインは、ゲームプレイヤーの意識を三つの層に分けている。ゲームのキャラクターとの直接の同一化、プレイヤーとしてゲームの過程に参加すること、人間として、より大きな人づきあいの文脈の中にいるということである。」(P363)

​「ファインによる三層モデルは、遊びの二重の意識を拡張したものだ。プレイヤーは、自分が遊んでいることをいつも自覚している。そうしたことを弁えた上で、人間、プレイヤー、キャラクターの役割を自由に行ったり来たりするのだ。ゲームのプレイヤーは、魔法円が維持されているあいだ、自在に往来して、没頭したり我に返ったり、プレイヤーやキャラクターの枠を破ったりするのだ。」(P358)

ゲームと同一化を考える上で非常に重要な指摘ですね。
​ゲームはキャラクターとの一体感を強く生み出す点から同一化ばかりに目が行ってしまいますが、実態はもっと複雑であるということでしょう。
: ゲーム研究 : 23:25 : comments(0) :
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